航空整備士の仕事内容とは 整備士が行う業務の種類を徹底解説
飛行機の整備と聞いて、どのような仕事をイメージするでしょうか。
- 「出発前に異常がないか見て回っている…?」
- 「工具箱を片手に故障したところを直して回っている…?」
- 「整備工場で飛行機を分解している…?」
漠然とイメージが湧いても、詳しいことはわからないという方もいるはず。
あわせて、整備士になりたいという方に向けたちょっとした注意点も解説しています。
それでは、順番に見ていきましょう。
航空整備士の仕事の種類
ひとくちに整備士といっても、その仕事内容は様々です。
専門性や担当する整備作業の深度によって、主に以下の4種類に分けられます。
- ライン整備
- ドック整備
- 原動機整備
- 装備品整備
それぞれ、順番に解説していきます。
ライン整備
毎日のフライトの合間に点検作業などを行うのがライン整備です。
出発する飛行機に手を振っている整備士、と説明するとピンとくるかもしれません。
ライン整備の一例として、具体的には以下のような仕事があります。
<工期実施間隔人数規模>
- 朝一番、初便が出発する前に飛行機の電源を入れる
- 飛行機の出発前、機体外部や機内の目視点検を行う
- 到着した便の乗員(パイロット・CA)から、機体のシステムや客室に不具合がなかったか聞き取りを行う
- 不具合があった場合、その場で修復できるものは修復する
- 短時間で修復が難しい不具合は、次の整備機会まで不具合を持ち越せるか整備マニュアルで調べ、適切な処置をして次便の出発に備える
よくある作業は、タイヤ交換、コクピットの計器に表示された警告メッセージに応じたシステムのテスト、バードストライク時の詳細な点検と動作テストなどです。
ライン整備はとにかく時間との闘いになります。
飛行機が到着してから次に出発するまでのスケジュールは、以下のように設定されていることが多いです。
<代表的な機種到着〜出発の目安時間>
プロペラ機・リージョナルジェット機(100席未満) |
20〜30分 |
小型ジェット機(約100〜200席クラス) |
25〜40分 |
中型ジェット機(約200〜300席クラス) |
35〜50分 |
大型ジェット機(約300席以上) |
50分〜1時間 |
機体が大きくなると一応整備時間は長くなっています。
しかし、機体が大きければ外部を一周して目視点検するだけでも時間がかかるので、その割には設定時間が短いことがわかりますね。
この短時間でできることには限りがあるので、点検作業が中心になり、あまり大掛かりな修理作業はしませんが、直せるものは次の出発までに大急ぎで直します。
また、翌朝始発便までの夜間の駐機時間を利用してエンジンを開けて部品の定期交換をするなど、点検以外の作業もたくさんあります。
ドック整備
格納庫(ハンガー)と呼ばれる施設に飛行機を長期間停め、大掛かりな点検・修理といった整備作業を行うのがドック整備です。
車でいうところの車検、人間でいうところの人間ドックによく例えられます。
飛行機の整備実施時期は、タスクごとに実施時期が厳しく定められています。
何日ごとにここの目視点検をしなさい、「何時間飛ぶまでにこのシステムの動作確認をしなさい」、「何回フライトするまでにこの部品を交換しなさい」といった具合です。
これらのタスクの実施期限が近いものをまとめてパッケージにし、ドック整備期間にまとめて実施していきます。
もちろん、作業の中で不具合が見つかれば、その場で確実に修復していきます。
航空会社や機種によっても異なりますが、パッケージのイメージはこのような感じです。
- A整備…数日(2〜5日)。数か月に1回。約10人体制
- C整備…1〜2週間程度。約5〜10年に1回。50~60人体制
- D整備(重整備)…3〜4週間程度。約5〜10年に1回。50~100人体制。
特に、D整備では文字通り飛行機をバラバラにします。
エンジンを取り外したり、ランディングギア(着陸装置、いわゆる「脚」)を交換したりといった作業もあり、実に大掛かりです。
ライン整備士と違ってお客さんの顔を見ることは殆どない一方、飛行機の最深部まで整備でき、「これぞ航空機の整備」とも言えるやりがいがあります。
原動機整備
原動機整備は、読んで字のごとく原動機=エンジンの整備を専門に行います。
飛行機は非常に複雑な構造をしていますが、エンジンというのはそれ単体でも十分に複雑な構造をしています。
飛行機から取り外されたエンジンは専用の施設(エンジンショップ)に運び込まれ、エンジンのエキスパートによって点検・修理が行われるのです。
溶接や金属加工といった板金作業も多いですが、飛行機の心臓ともいわれるエンジンの整備をするわけなので、精密さも求められます。
特に精密な箇所の検査を行うために、裸眼で2.0以上の視力が必要という専門の検査員資格を設けている会社もあるようです。
ちなみに、基本的にエンジンショップにこもっているため、「航空整備士のはずなのに、飛行機そのものは触れるどころか見ることもない」という不思議な状況になります。
それでも飛行機の心臓部を整備するという重要な役割の仕事です。
装備品整備
飛行機から取り外した部品(装備品)は検査や修理をしたのち、また飛行機に取り付けられます。
この装備品の整備を専門に行うのが装備品整備です。
一言で装備品といっても、たとえばフラップやウイングレットなどの構造部材や、燃料・油圧バルブなどの機械部品、電気系部品・コンピュータ類など、その種類は多岐にわたります。
構造系なら板金スキル、コンピュータ系なら配線などの電装スキルのように、それぞれの技術のプロフェッショナルの手により整備が行われます。
会社を選ぶときには、業務内容を要チェック!
ここまで、航空整備士の仕事4種類を紹介しました。
「やってみたい!」「やりがいがありそう」と感じた仕事があったのではないでしょうか?
会社によっては、紹介した仕事を全部行っているところもあれば、一部行っていない場合もあります。やりたいお仕事に合わせて会社を選ぶとよいでしょう。
自社でハンガーを所有している会社はライン整備、ドッグ整備、原動機整備、装備品整備のすべてを経験することができます。
しかし、ハンガーやショップを持っていない会社(中小エアラインやLCCなど)はライン整備とA整備の一部のみ。逆にライン整備は一切やらず、ドック整備のみを行う会社もあるので、会社を選ぶときには注意が必要です。
ライン整備 | ドック整備 | 原動機整備 | 装備品整備 | |
大手エアライン |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
中堅エアライン |
〇 | × | × | × |
LCC |
〇 | × | × | × |
整備専門会社 |
△ | 〇 | × | × |
ですから、たとえばドック整備がやりたいのであればLCCに就職しても夢は叶いませんし、むしろ絶対にラインの仕事がしたいというのであればLCCが狙い目です。
また、大手では人材育成などの点から数年で別の部門に異動になるということもありますし、そもそも自分の希望に合った部門に配属されるとも限りません。
就職した後で自分のやりたい整備ができるかは求人サイトや会社説明会などでよくチェックするようにしましょう。
以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてチェックしてみてくださいね。
まとめ
飛行機の整備士がどのような仕事をしているかイメージが湧いたでしょうか。
もう一度おさらいしてみましょう。
<実施の場主な作業>
- ライン整備運航便の合間や夜間点検作業、比較的軽い保守・修理作業
- ドック整備ハンガー(数週間)ライン整備ではできない重い整備作業
- 原動機整備エンジンショップ飛行機から取り外したエンジン専門の整備
- 装備品整備装備品ショップ飛行機から取り外した部品の整備
そして、もしどうしてもやりたい仕事があるなら、就職した後で本当にそれができるかを良く調べ、会社選びに失敗しないよう気を付けることが大切です。
航空機の整備にもいろいろな種類があることを説明しましたが、いずれも飛行機の毎日の安全運航を支える重要な仕事であるということは共通して変わりません。
この記事を読んで、面白そうと思ったものがあれば是非チャレンジしてみてくださいね。
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