航空整備士の退職手続きの流れと転職先の見つけ方
憧れの航空整備士になったはいいものの、
「思っていた仕事と違った。もう辞めたい」
「今の会社よりもっと条件のいいところで働きたい」
と思っていませんか?
また、航空業界は狭く、転職活動で気を付けなければならない点もあります。
これから説明する注意点や転職方法をきちんと確認していきましょう。
航空整備士ならではの転職・退職の注意点
はじめに、筆者が考える航空整備士ならではの転職・退職の注意点を紹介します。
業界内で整備士として転職しようとする人、整備士を辞めて他業界への転職をしようとする人、そのどちらにも当てはまる内容なのでぜひ一度目を通してくださいね。
退職時に会社と対立しないこと
円満退社はどの業界でも共通する理想なのですが、航空整備士にとってはとくに重要です。
なぜなら...航空業界はとにかく狭い世界だからです。
すでに航空業界で働いている方ならピンとくるかもしれませんが、この業界は本当に狭いです。
「羽田のドックにいた〇〇さん、今は××航空にいるらしいよ」といった話がよくあるんです。
誰がどこの会社に行ったという情報はすぐに出回ります。
整備現業部門では他の航空会社の人と接する機会は少ないかもしれませんが、整備スタッフ部門の管理職クラスにもなるとお互いに面識があります。
そのため、このような情報はちょっとしたキッカケで簡単に同業他社に流れるのです。
ですから、もし退職時に会社と揉めてしまうと、業界内で転職した場合、
「あの人はウチの会社を辞める時にさんざん文句を言った」
などとネガティブな情報を流され、転職先で自身の評判を下げてしまう可能性があります。
また、転職活動中にそういったネガティブな情報が出回ってしまうと、選考の段階で警戒されて採用を見送られてしまうことも考えられます。
他業界に転職しようとする人であっても、これは注意すべきポイントです。
転職する際に「もう航空業界には戻ってくるつもりはない」と思っていても、
- 「一度離れてみると、やっぱり航空整備士は楽しかったと気づいた」
- 「せっかく資格を取ったのに辞めてしまったのは勿体ない気がしてきた」
- 「転職先がブラックで、航空業界の方がマシだった」
など理由はさまざまですが、整備士や整備スタッフ職などとして再びこの業界に戻ってくる人も少なくありません。
しかし、会社を辞める際に揉めたのが原因で業界内で悪い噂が広まってしまうと、航空業界に戻ってくるのが難しくなってしまいます。
したがって、給与や勤務時間の事などの不満を感情的に上司にぶつけたり、同僚との間で堂々と会社批判をしたるするのはNG。
上司に退職理由を伝える際も、「家庭の事情で勤務地を変えたい」といった仕方ないと納得してもらえる理由や、「〇〇に挑戦したい」のようにポジティブな理由を伝えるのが無難です。
転職活動を会社に悟られないように
同業他社に転職する場合、転職活動をしているのが会社にバレると危険な可能性があります。
これは筆者の知り合いAさんが経験した話。
Aさんは在職中に転職活動を始めたのですが、そのことを何人かの同僚に話したのがきっかけで、整備部門で「Aさんが辞めるらしい」と噂が立ってしまいました。
その噂は整備部門のトップの耳に入り、他の航空会社の知り合いにこんな電話をかけられたそうです。
「おたくの会社にAさんって人が中途採用面接受けに来てない?あの人採用しない方がいいよ」
Aさんの会社は人手不足だったため、人材流出を防ぐために、「スキルが低い」、「勤務態度が悪い」など、あることないこと言われて転職の妨害工作をされたのです。
航空業界の狭さについては上でお話しした通り。
Aさんのような目に遭わないためにも、在職中に同業他社の採用面接を受けるのであれば、そのことは親しい同僚も含めて周囲には黙っておいた方がよいでしょう。
珍しいことではないのかもしれません...
退職申し出のタイミング
航空整備士の方はたいていシフト制勤務だと思います。
会社の規則で「退職希望日の〇週間前までに申し出ること」とあったとしても、それが翌月のシフト発表後や発表直前であった場合、「急に言われても困る」と受け付けてもらえない可能性があります。
ですから、スケジュールはよく考えておくことをオススメします。
法律上は2週間前までに退職の意思表示をしていれば一方的に会社を辞めることはできるのですが、上でお話ししたように会社と揉める原因を作るのは避けるべきでしょう。
航空整備士の退職手続き
ここでは、退職に必要な流れと転職活動の流れを簡単に説明します。
退職するまでのスケジュールを考える参考にしてください。
一般的な退職手続きの流れ
航空整備士も会社員ですから、退職の手続きは一般的なものと違いはありません。
転職サイトではより詳しい解説が読めたりするので、併せて活用してください。
退職の手続き方法は以下の通り。
- 退職の意思表示(1〜3ヶ月月前)
- 退職願を提出(退職の1〜2ヶ月前)
- 退職(最終出社)まで
詳しく解説していきますね。
(1) 退職の意思表示(1〜3ヶ月月前)
まずは自分の直属の上司に退職の意向を伝えます。
「〇月×日の勤務終了後にお時間頂けますか」と面談のアポイントメントを事前にとっておくとよいですね。
誰に伝えればよいのか迷うかもしれませんが、まずは自分に一番近い上司に話すのがよいです。
組織図を確認して、自分のひとつ上の職位が誰かを確認しましょう。
順番を間違えると(たとえば、班長に話を通さずいきなり部長に伝えてしまう等)、話を通さなかった上司に失礼にもなりますし、無用なトラブルの原因にもなりかねません。
また、会社によって意思表示をする期限が異なりますので、就業規則をよく確認してください。
わからない場合は人事部門に問い合わせるという手もあります。
一般的には1ヶ月前に申し出るよう定められていることが多いようですが、上で述べた通り、シフトが決まるタイミングを考慮して少し早めに伝えた方が良いです。
最終出社日以降に有給休暇を消化したいのであれば1.5〜2ヶ月前、そうでなければ1ヶ月前までが目安になるかと思います。
(2) 退職願を提出(退職の1〜2ヶ月前)
上司に退職の意思表示が済んだら、正式に退職願を出します。
会社指定のフォーマットが用意されていることもあるので、就業規則などで確認しましょう。
退職理由を会社に伝える法的な義務はないので、「一身上の都合」とだけ書いてあれば基本的には問題はありません。
それでも詳細な理由を書くよう求められた場合は、自分に不都合のない範囲で記載すればOKです。(たいていは面談の際に口頭で伝えれば済むと思います。)
ただし、間違っても会社を批判するような内容は書かないように...
(3) 退職(最終出社)まで
退職が決まったら、最終出社日までに会社から受け取るべきものを確認しておきましょう。
ここではそれぞれの細かい説明は省きますが、一般的には以下の書類です。
- ・雇用保険被保険者証
- ・源泉徴収票
- ・離職票
- ・退職証明書
- ・年金手帳(会社に預けている場合)
最終出社日には、会社からの貸与物などを返却します。(例: 社員証・健康保険被保険者証・制服・個人貸与工具)
会社から返却するよう指示されるはずですから、ここはあまり心配しなくてよいでしょう。
なお、整備マニュアルや会社の内部資料などを持ち出すのは厳禁。
訓練資料なども場合によっては会社への返却や破棄を求められるかもしれませんので、心配があれば会社に指示を仰ぎましょう。
転職活動のタイミング
今いる会社に勤めながら転職活動をするか、辞めてから転職活動するか。
それぞれにメリット・デメリットがあるので、自分に合う方を選択してください。
どちらを選択するにしても、「とりあえず転職サイトに登録だけしておく」というのはオススメです。
本格的に活動を開始する前に、どんな求人があるのか眺めてみるだけでも新しい発見がありますし、いざ活動を始めようと思ったときにすぐ行動に移せます。
(1) 今いる会社に勤めながら転職活動をする
◆メリット
- 収入が途切れない
- 転職活動が上手くいかなくても失業のリスクがない(⇒条件等で妥協して転職する必要がない)
◆デメリット
- 転職活動の時間が確保しづらい
- 休日を使っての活動になるため、体力的にハード
(2) 今いる会社を辞めてから転職活動をする
◆メリット
- 時間的余裕がある(⇒業界・企業研究に時間をかけられる、研究複数社の面接も対応しやすい)
- 条件次第では失業手当・再就職支援金などが受けられる
◆デメリット
- 収入が途絶える
- 再就職が決まらなかった場合のリスクが大きい(⇒再就職を焦って前職より悪い条件で就職することにもなりかねない)
- 失業期間が長引くとスキル・意欲が低下
航空整備士の転職先の見つけ方
転職サイト
様々な業界・業種の求人情報の閲覧・検索ができ、気に入った求人があればエントリーができます。
基本的に無料なので、情報収集のためにも「とりあえず登録しておく」と良いでしょう。
転職のプロへの相談ができませんが、空き時間などを活用して自分のペースで転職活動ができます。
転職エージェント
転職のプロがアドバイス役としてついてくれ、求人を紹介してくれるサービスです。
経験やスキルなどに応じて、非公開の求人情報を紹介してくれることもあります。
また、企業側との調整を代行してくれたり、面接対策・履歴書の添削なども行ってくれるので、転職未経験の人には安心のサービスと言えるでしょう。
ただ、一般的にアドバイザーとして担当してくれる期間に制限(3ヶ月)があるため、本気で転職活動をしようと思っている人以外には向かないかもしれません。
ハローワーク
雇用指導官・職業指導官と呼ばれる就職相談の専門家から個別のアドバイスを無料で受けながら就職先を探すことができます。
会社を辞めてから転職先を探す人は特に、失業保険の申請等で訪れたついでに活用するとよいのではないでしょうか。
同業他社の社員からの情報
狭い航空業界の強みです。
業界が狭いからこそ、同業他社に知り合い(たとえば、整備専門学校時代の友人など)がいる場合もあるのではないでしょうか。
人脈を活かして情報収集をすれば、転職サイト等での求人を探しやすくなると思います。
業界内で転職するのであれば、
「うちの会社は人が足りていないから募集をかけている」
「整備士ではないが、整備のスタッフ業務を募集している」
といった情報が入ってくる可能性もあります。
また、他業界へ転職する場合でも、
「うちの会社から〇〇社に転職した人いるよ。整備士としての経験が評価されたらしい」
といった情報がもらえるかもしれません。
自分の周りで転職した人だけでなく、同業他社の知り合いから話を聞くことで、「そういう進路もあるのか」と新しい発見が得られることもありますよ。
まとめ
ここまで、航空整備士が転職する上での注意点と、退職までの流れ・転職先の探し方を解説しました。
もう一度おさらいしてみましょう。
- 航空業界は狭いことを認識し、円満退社を目指す!
- シフトが決まる前に直属の上司に退職の意思表示、退職願の提出をする
- 人脈を活かして情報収集をしつつ、転職サイト・エージェントで自分のやりたい仕事を見つける
最近は一つの会社にずっと勤めるより、転職でキャリアアップを目指す人が増えていると言われています。